SCP-XXXX-JP 祈りは神を選べない

オブジェクト番号: SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス: Keter(再分類前: Thaumiel)

特別収容プロトコル(更新):

SCP-XXXX-JPは202█/██/██付でKeterクラスへ再分類された。全世界に拡散しているSCP-XXXX-JP-1の即時回収は現実的に不可能と判断されており、現在は代替的制御計画(プロトコル-λ-23《遮光幕》)を適用中。火継(SCP-XXXX-JP-A)との接触および対話は凍結され、該当個体の所在特定および拘束が最優先事項とされる。

SCP-XXXX-JP-1(通称:《あかり》)の拡散制御のため、すべての政府機関・医療機関・教育機関に対し、該当物品の公共空間からの撤去命令を通知済み。今後は「SCP-XXXX-JP-1の無許可所持者=特異影響下対象者」としてマークされ、段階的な隔離・追跡が行われる。

説明(更新):

SCP-XXXX-JPは、当初は社会安定化に寄与する友好的超常現象として評価されていたが、202█年██月██日、生成元であるSCP-XXXX-JP-A(通称:火継(hitugi))がヴィラン連合幹部であることが財団・公安の共同調査により判明した。さらに同時期、《あかり》と呼称されていたオブジェクト群(SCP-XXXX-JP-1)の正体が、SCP-XXXX-JP-A個人の特異能力(個性)により維持されている生体依存型の超常リンクであることが明らかとなった。

この事実により、SCP-XXXX-JP-1は分離可能なオブジェクトではなく、SCP-XXXX-JP-Aの意識と連結された一種の生体端末であることが確認された。
さらに問題視されたのは、従来《あかり》の効果は「強化方向のみ」「無害な心理安定効果」とされていたが、火継本人が《あかり》の“弱化”操作が可能であると発言し、その実演が記録されたことである。

補遺 XXXX-JP-b: ██区事案

202█年██月██日、東京都██区にて、SCP-XXXX-JP-Aの所在を追跡していた公安監視チームの接近を受け、SCP-XXXX-JP-Aが《あかり》に対し一時的な遮断操作を実施。
同区内のSCP-XXXX-JP-1所持者──推定███名──のうち、約70%が即時的な精神錯乱、暴力衝動、幻覚、離人症状、重度の恐怖・被害妄想を発症。そのうち██名が自傷または他害行為に及び、緊急隔離された。

その後、火継の発言によって以下の事実が確認された:

「酷いことするなあ……。あれは“元に戻った”だけだ。まだ《あかり》が必要だった人達から取り上げるなんて」
この発言を裏付けるかのように、該当者らは元々、情緒不安定や対人恐怖傾向を抱えていたという過去の診療記録が確認されている。

再評価における決定的事項:

《あかり》は火継(SCP-XXXX-JP-A)の意志により一括制御が可能。

国中に分布する《あかり》所持者数は推定180万人以上。全員が火継の一存で精神状態を操作可能な“接続端末”状態にある。

《あかり》の心理的安定効果は個性「灯火」の副産物であり、火継の生存と精神状態に強く依存している。

火継が衰弱・死亡・敵意化した場合、所持者の精神は反転・崩壊・過負荷のいずれかに至る可能性がある。

結論(再評価):

SCP-XXXX-JPは、あまりに美しすぎる理想が一個人に依存していたことにより、史上最も危険な生体依存型広域精神汚染オブジェクトとして再定義された。
過去のThaumiel分類は、SCP-XXXX-JP-Aの意図的な「敵意の不在」に基づいた評価であり、“操作されていない”のではなく、“操作されていないように見えていた”ことが明らかとなった。

SCP-XXXX-JP-1の存在は、現時点で地球人口の約■%が火継ひとりの意思に握られているという事実を意味する。

補遺 XXXX-JP-c: 提言要旨

「我々は、平和の象徴に見えるものが“支配装置”であったとき、どのように対処するべきか。
火継が善人であるかどうかではなく、“人である”という一点こそが最大のリスクだ。
神が気まぐれでスイッチを切ったら、世界は崩壊する。我々はその神を、祈る対象ではなく、止める対象として見る段階に来ている。」
―――倫理委員会・緊急諮問報告より

補遺 XXXX-JP-d: ██区事案詳細記録「██死亡事変」

発生日: 202█年██月██日
場所: 東京都██区、███地区
関係者: SCP-XXXX-JP-A(火継)、███(死亡)、市民多数、ヒーロー・公安連合部隊

【事件概要】

同日、ヴィラン連合構成員███がヒーローとの戦闘により現場にて死亡。
これに際し、SCP-XXXX-JP-A(火継)は半壊した建物の屋上より、胸部に《あかり》を押さえるような動作を行い、続いて街頭スピーカーや公共施設の音響設備に対して、以下の音声信号をジャック・拡散した。

「───『たすけて』」

直後、周囲の空気は瞬時に沈黙し、街中に散在していた《あかり》保持者──老若男女問わず、計測不能数──が一斉にSCP-XXXX-JP-Aの元へ集結する様子が記録されている。

【異常行動の発生】

現地ヒーロー部隊の観測報告によれば、《あかり》保持者は明確な命令・通信なしに以下の行動を取った。

・非武装のままヒーローとヴィラン連合の間に立ちふさがる
・両手を広げ、「やめて」「やめてあげて」「助けてあげて」と叫びながらヒーローにしがみつく
・身体を盾にし、火継およびヴィラン連合メンバーの進路を確保する
・一部は涙を流しながら火継にしきりに、「大丈夫? 怪我は無い?」と安否を確認し続けた
・誰一人として、火継への攻撃的言動・敵意を見せなかった

一連の行動は明確な「庇護本能」に基づいており、《あかり》保持者同士の間でも連携が見られたことから、一種の情動同調ネットワークが形成された可能性が高い。

【音響ジャックと心理的トリガー】

《あかり》保持者の急激な心理変容は、火継の発した「たすけて」の一言と、《あかり》の発光変化(微弱に揺らぎ、ろうそくのように儚く灯る)によって引き起こされた。

この現象は、「心理的共鳴を利用した行動誘発型トリガー機構」が存在することを示唆しており、火継が“悲しみ”や“弱者性”を演出した瞬間に、あらゆる《あかり》所持者が彼を『守るべき存在』として認識したと考えられる。

この反応は、従来の《あかり》効果が持つ「精神安定」や「共感性向上」とは質的に異なり、明確に火継中心の“命令なき従属”構造が確認された、初の大規模事例である。

【火継の発言(音響設備ジャック)】

「踏み躙ってみろよ、ヒーロー」

この発言は、公的なスピーカーシステムを通じて市街全域に拡散されたものであり、現場のヒーローらは明確な躊躇と混乱を見せた。
結果として、SCP-XXXX-JP-Aとヴィラン連合構成員は混乱の隙を突いて逃走を果たしている。

分析および結論:

本事例は、《あかり》が単なる心理安定ツールではなく、「火継の情動・演出に同調し、民衆の自発的な行動によって社会的・戦術的防衛が可能である」ことを意味する。

特筆すべき新たな危険性は以下の通り:

・火継が自己演出ひとつで、180万人の“非武装防衛兵”を呼び出す可能性がある
・《あかり》保持者は、自らの意思だと錯覚したまま他者を妨害・庇護・支援する
・火継の「たすけて」という一言は、世界規模で心理的ジャミングを起こしうる

従来のThaumiel評価においては、「火継が人間であり、敵意がない」ことが前提とされていた。
しかし本件により、《あかり》は“善意すら兵器に変える”可能性を孕んだ存在であると再定義される。

【備考】

一部の倫理委員会メンバーは、「この事件以降、世界は火継を“触れてはならない引き金”と見なすべきである」との見解を示した。

同様の現象が再度発生した場合、現場ヒーローの多くが“市民を犠牲にできない”という倫理的制約により無力化されるリスクが高い。

財団は「感情誘導型精神支配構造」としてSCP-XXXX-JPのさらなる再評価に着手している。