対象: ノーカウント構成員 / 氏名不詳 / 推定十代後半
呼称: “兄さん”“お兄ちゃん”
備考: ノーカウント年少構成員の指示役と見られる。フォージャーの影武者の一人である可能性あり。拘束時、しんがりを務め、同行していた年少構成員六名を逃走させた。
聴取室に入れられた少年は、椅子に座るなり机の上の紙コップを見て笑った。
「水? 毒ちゃうん。おっさん、毒盛るならもっとええ器にしぃや。紙コップはないわ。予算たりんのバレると舐められるで」
右頬に擦過傷。左眉の上に裂傷。手首には拘束痕。拘束時に複数名の年少構成員が「兄さん」「お兄ちゃん」と叫んでいたため、当初は血縁者の可能性を疑ったが、確認できず。本人も否定も肯定もしない。
聴取官: 名前は。
少年: 佐藤エリザベート胡麻太郎。
聴取官: 本名を聞いている。
少年: ほな山田キャシー信長。
聴取官: ふざけるな。
少年: ふざけてへんで。俺のこと知らんの? 西日本を牛耳る山田キャシー信長や。泣く子も黙るし、泣いてへん子も空気読んで黙る。
聴取官: ノーカウント内での呼称は。
少年: 兄さん。
聴取官: それは個人名ではない。
少年: せやな。個人名なんかいらんやろ。呼んだら振り向く音ならそれで足りる。あんたらは名前ないと人間数えられへんの? 不便やなあ。
聴取官: お前は年少構成員の指示役か。
少年: 俺はみんなのお兄ちゃんや。迷子の案内と、転んだ子に痛いの痛いの向こうのお山に飛んでけする係。ついでに銃の安全装置も教えたりする。じゃがりこ三本で等価交換や。
この時点で少年は笑っていた。挑発のために笑っているというより、こちらが不快になる言葉と態度を探しているような笑い方だった。問いに対して正面から答える気は薄い。回答の大半は虚偽、誇張、比喩、悪意ある冗談で構成されている。
聴取官: 拘束時、なぜ一人だけ残った。
少年: かっこええから。
聴取官: 仲間を逃がすためか。
少年: せやで。かっこよすぎて映画一本撮れそうやろ。
聴取官: 命令か。
少年: 俺が俺に命令した。全軍突撃、全軍撤退、俺だけ居残り補習。ええ作戦やったやろ。実際、あんたら俺しか捕まえられてへん。俺の勝ち。いえいいえい。
聴取官: 逃げた構成員の行き先は。
少年: 右。
聴取官: 右とは。
少年: 左の反対。
聴取官: 施設名、隠れ家、合流地点を言え。
少年: 愛と夢の国。入場料は板チョコ一枚。あんた達は出禁。
聴取官: フォージャーの所在を知っているか。
少年: 知らん。
聴取官: 知らないのか。
少年: 生まれた場所は知ってる。教えたろか。
聴取官: どこだ。
少年: 公園のトイレの1番奥。
聴取官: それは事実か。
少年: おぎゃーおぎゃー。
聴取官: どこの公園だ。
少年: おぎゃーおぎゃー。
聴取官: 誰から聞いた。
少年: 赤ちゃんはなあ、泣くのが仕事なんですぅ。
聴取官: ふざけるなと言っている。
少年: ふざけてへんよ。赤ちゃんの真似しただけやん。あれやろ、電車で赤ちゃん泣いてたら舌打ちするタイプやろ。子は宝やん許したれや。
聴取官: フォージャーは現在どこにいる。
少年: 俺の胸の中。
聴取官: 具体的に答えろ。
少年: ほな、空の上。海の底。冷蔵庫の奥。布団の中。知らんの? フォージャーくんは概念やねん。朝起きて米がある、服がある、俺のための靴がある、それがフォージャーくん。
聴取官: フォージャーの容姿は。
少年: 異形型。めっちゃデコボコしてる。右肩からツノ生えてて、左目が七個ある。
聴取官: そのような目立つ容姿なら既に素性が割れている。
少年: せやな。ほな爆美女かもしれへん。たまらねえ爆美女。見たら全員恋に落ちる。ヒーローもヴィランもケーサツも、みんな求婚して世界平和。
聴取官: 性別は。
少年: 火曜日は男。水曜日は女。木曜日は両方。金曜日は忙しいから休み。
聴取官: 年齢は。
少年: 五歳。
聴取官: あり得ない。
少年: ほな八百歳。平安京からおる。陰陽師とマブ。
聴取官: 本人を隠すために嘘をついているのか。
少年: ちゃうちゃう。あんたらが勝手に“本人”を欲しがってるだけやろ。フォージャーはフォージャーや。どれが本物とか、そういう貧乏くさい考え方やめたら? せっかくやし一個くらい世界観広げて帰り。
聴取官: お前はフォージャーの影武者か。
少年はそこで初めて、少しだけ笑い方を変えた。歯を見せていた顔が、口だけ笑って目が止まる形になった。
少年: 影武者ってええな。かっこええ。採用。
聴取官: 質問に答えろ。
少年: 俺がフォージャーくんやったらどうする? 今この場で大勝利? 出世? 表彰? 上の人に頭なでてもらうん? 給料いくらもろとるん?
聴取官: お前はフォージャー本人なのか。
少年: はいワタクシがフォージャーです。
聴取官: お前が本人ではないことは分かっている。
少年: ほな聞くなや。面倒なカノジョか? アタシのこと愛してるって毎秒聞くんか。愛してへんと許されん所行やでそれ。
以後、対象の個人情報に関する質問には同様の虚偽供述が続いた。供述内容は一定せず、性別、年齢、外見、居場所、接触方法のすべてが質問ごとに変化した。意図的な攪乱と見る。
聴取官: フォージャーはお前に何を与えた。
少年: 友情と努力と勝利。
聴取官: 具体的に。
少年: 飯。服。寝床。仲間。あと平等のためのプレゼント。
聴取官: 平等のためのプレゼントとは。
少年は両手首の拘束具を軽く鳴らした。からん、と乾いた音がした。
少年: 銃。
聴取官: 未成年に銃を持たせることが平等だと?
少年: せやで。殴られるだけのやつと、殴り返せるやつは平等ちゃうやろ。二本の足で逃げるしかないやつと、車乗って追っかけるやつも平等ちゃう。綺麗事言うやつは、だいたいヘーワな場所におるんよ。
聴取官: 安全な住処と食料なら、福祉でも与えられる。
少年は一拍置いてから、大声で笑った。椅子の背に体を預け、天井に向けて笑い、最後には少し咳き込んだ。嘲笑というより、あまりにも馬鹿なことを言った相手に向ける笑いだった。
少年: それだけのもんもくれんかった分際で?
聴取官: 質問に答えろ。
少年: 答えたやん。くれんかったやろ。安全な住処? 飯? 何年も? 忘れずに? 途中で担当替わったから知りません、書類がないから知りません、保護対象外です、年齢が、戸籍が、本人確認が、親権者が。よう言うわ。ほんま、よう言う。あんたらの“くれる”は、そこにたどり着けたやつだけの景品や。俺らには届かんかった。
聴取官: フォージャーは届いたと。
少年: 来たんや。呼んでもないのに。いや、呼んでたんかもな。にゃーにゃー鳴いてたから。
聴取官: どういう意味だ。
少年: 俺ら猫やねん。懐いた野良猫とか無視できん人なんやろな、フォージャーくんは。路地裏でにゃーにゃー鳴いてたら、困ったなあ言うて、餌と巣と首輪くれてん。ほんで毎日来る。昨日だけちゃう。今日だけちゃう。気まぐれの善意ちゃう。何年も忘れへん。
聴取官: 首輪とは支配のことか。
少年: 名前のことや。仲間のことや。おそろいの印のことや。支配? あんたらほんま支配好きやな。すぐ自分らの得意分野に話持っていく。
聴取官: フォージャーを神格化している自覚はあるか。
少年: 神様なんか知らん。神様は飯持ってきてくれへんかったし、靴もくれへんかったし、身体洗うお湯もくれへんかった。フォージャーくんはぜーんぶくれた。困ったことないかって、俺に聞いてくれてん。俺に。俺の話を俺に聞いてくれてん。ほんま感動したわ。神様なんてもんよりフォージャーくんの方が偉い。
聴取官: フォージャーのためなら人を殺すのか。
少年: それ聞き方ズルいなあ。あんたらも“国のためなら撃つのか”って聞かれたら、規定に基づき必要な措置を、みたいな顔するやろ。俺らだけ情緒で裁くなや。
聴取官: 殺すのか。
少年: 俺らのもんを奪いに来たら、返してもらう。邪魔されたらどかす。それだけ。
聴取官: それを殺人と言うんじゃないか。
少年: ほな、先に俺らを死んだことにしたやつらにも名前つけたってや。
この発言中、少年の声は荒れていなかった。怒鳴るわけでもなく、笑うわけでもなく、むしろ聴取開始後もっとも静かだった。フォージャーに関する侮辱、否定、矯正の示唆には即座に反応するが、フォージャーから受けた恩恵について話す際は、作話の癖が一時的に弱まる。
聴取官: フォージャーのどこにそこまで従う理由がある。
少年: 従ってへん。好きで一緒におる。
聴取官: 何がそこまで特別なんだ。
少年: 無言実行。
聴取官: 無言実行?
少年: せや。フォージャーくん、かっこええねん。かわいそうやなあ、助けたるわあ、俺はお前らの味方やでえ、みたいな顔せぇへん。何も言わんと飯置く。何も言わんと着るもん置く。何も言わんと薬置く。何も言わんと銃置く。ほんで、忘れへん。誰にでも分け隔てない。泣いてるやつにも、怒ってるやつにも、嘘つきにも、盗むやつにも、噛みつくやつにも、ちゃんと渡す。
聴取官: だから守るのか。
少年: そら守るやろ。フォージャーくん、優しいし便利やもん。
聴取官: 便利?
少年: 便利。飯出せる、服出せる、弾出せる、宝石も出せる。そんなん悪いやつが放っとくわけないやろ。イイ人はな、悪いやつにすぐ目ぇつけられんねん。優しいやつほど、便利なやつほど、先に食われる。せやから俺らで守らなあかん。
聴取官: 悪いやつとは誰のことだ。
少年: さあ? 心当たりあるなら胸に聞いたらええんちゃう。心臓ちゃんがお答えしてくれるで。
聴取官: フォージャー自身がお前たちを悪用しているとは考えないのか。
少年: 悪用? 俺らに飯食わせて、綺麗な服着せて、銃持たせて、忘れんといてくれることが? ほな善用って何? 腹減った子にこれ見て元気出しやってステーキの絵でも見せること?
聴取官: 犯罪者にも与えるのか。
少年: 子供にも、やろ。
聴取官: 犯罪に手を染めた未成年だ。
少年: ほな、犯罪に手ぇ染める前の俺らはどこにおったんやろなあ。誰か知ってた? 誰か名簿に入れてた? 誰か「あの子は大丈夫かしら」ってチラとでも考えた? なあ、お偉いさん。
少年は机の上の紙コップを指先で回した。水面はほとんど揺れていなかった。挑発的な言葉とは反対に、手元は落ち着いている。
聴取官: ノーカウントの頂点はフォージャーか。
少年: 頂点て。山か。俺らそんな立派なもんちゃうで。
聴取官: 実質的な支配者ではないのか。
少年: フォージャーくんもノーカウントや。
聴取官: 供給源であり指導者だろう。
少年: でもゼロや。俺らと一緒。数えられへんかった側。上から見下ろす一番ちゃう。ゼロの中におるゼロや。せやから仲間やねん。
聴取官: フォージャーには名前があるのか。
少年: そらあるよ。
聴取官: なら、なぜゼロなんだ。名前を持つなら、ノーカウントの思想に反するのではないか。
少年は少しだけ目を丸くした。それから、心底おかしそうに笑った。こちらの矛盾指摘が効いたのではなく、そういう真面目な顔でそこを突かれること自体が面白かったらしい。
少年: 臨機応変にいこうや。
聴取官: ふざけているのか。
少年: だからふざけてへんて。そればっかやん。少しは信じてくれんと傷つくなぁ。名前があるから1になるんやったら、犬にも猫にも表札つけたら人権発生するんか? ちゃうやろ。ゼロって名前だけのもんやないねん。いろんなもんひっくるめてゼロやねんな。
聴取官: フォージャーもそうだと。
少年: せや。ほんで、フォージャーくんは俺らを1にしたがってへん。ゼロのまま拾って、ゼロのまま飯食わせて、ゼロのまま連れてってくれる。せやからええねん。
聴取官: 今からでも保護され、個人として扱われる道はある。
少年: いまさら1にされたって嬉しない。
聴取官: どういう意味だ。
少年: ゼロのままでええってこと。俺らはゼロで集まった。ゼロのまま飯食って、ゼロのまま寝て、ゼロのまま笑えるようになった。あんたらが今さら一人ずつ名前つけて、番号ふって、はい今日からあなたは大切な個人です人権最高言うても、遅いねん。
聴取官: フォージャーがヴィラン連合に加入した件について聞く。
少年はここで初めて、本当に意外そうな顔をした。眉を寄せるのではなく、目を丸くし、質問の意味を探すように聴取官を見た。
少年: うん。
聴取官: ノーカウントほどの規模の集団が、別組織へ接続される場合、通常は反発や分裂が起きる。なぜ問題が起きていない。
少年: そんなん嬉しかったからに決まってるやろ。
聴取官: 嬉しかった?
少年: ほかに何があんねん。
聴取官: 上位組織に吸収されることへの不満は。
少年: なんで?
聴取官: ノーカウント独自の帰属意識があるはずだ。
少年: あるで。
聴取官: なら、なぜ拒否反応がない。
少年: フォージャーくんが一緒に行くぞって言うたからやん。
少年は、本当にそれ以外の答えが存在しないという顔をしていた。こちらの想定している組織論、派閥、利害、独立性への執着を理解していないわけではない。ただ、それが自分たちに当てはまると考えていない。
少年: 置いていかれへんかったんやで。
聴取官: 置いていかれない?
少年: せや。強い人らのとこ行くんやろ。でかい話になるんやろ。普通やったら、足手まといはここまで、ガキもチビも役たたずもハイここまで、使えるやつだけ来い、あとは解散、そうなるやろ。でもフォージャーくんは違った。一緒に行くぞって。お前らもやって。忘れてへんかった。
聴取官: 危険に巻き込まれるとは考えないのか。
少年: とっくに危険や。危険やなかった日なんかない。どうせ地獄おるんなら、置いていかれるより一緒の方がええ。
聴取官: 死柄木弔をどう見ている。
少年: ゲーム強そう。
聴取官: 真面目に答えろ。
少年: 手ぇいっぱいくっついてる人やろ。知らん知らん。俺らはフォージャーくんについて行ったんや。連合について行ったんちゃう。フォージャーくんが頭下げとるから、俺らも死柄木さまサイコー連合に栄光あれーって両手あげるんよ。
聴取官: フォージャーはどこにいる。
少年: だから胸の中やって。
聴取官: 答えろ。
少年: 答えとるやん。あんたらが欲しい形の答えやないだけや。
聴取官: 接触方法は。
少年: 猫缶置いといたら来る。
聴取官: 合言葉は。
少年: にゃんにゃん、にゃーん、にゃんにゃん。
聴取官: 連絡端末はどこだ。
少年: 俺の胃の中。さっき飲んだ。
聴取官: 身代わり役は何人いる。
少年: ごひゃくまんに~ん。
聴取官: お前以外にフォージャーを名乗る者は。
少年: フォージャーはフォージャーやって。何回言わすねん。本人とか代理とか影とか、そういうの、ほんま好きやな。こっち飽きとんねん。家族写真の真ん中に誰がおるかでしか愛を測れへんタイプ?
聴取官: お前はフォージャーに利用されている。
少年: ええで。
聴取官: いいのか。
少年: 俺もフォージャーくん利用してるし。飯食うために。寝るために。あの人も俺ら使う。俺らもあの人使う。仲間ってそういうもんやろ。綺麗な言葉だけで一緒におれるほど、俺ら育ちようないねん。
聴取官: フォージャーがお前たちを捨てたら。
少年: 捨てへん。
聴取官: 根拠は。
少年: 捨てへんかった。
聴取官: これからもそうとは限らない。
少年: 何年も忘れへんかった人を、昨日見つけたあんたらが疑うん? おもろいな。ほんま、おもろい。鏡見た方がええで。
この時、廊下側で物音あり。記録上は金属落下音。少年は一瞬だけ口を閉じた。聴取官が確認のため視線を外した際、少年は紙コップの水を一口飲んだ。以降、態度に変化なし。
聴取官: ノーカウントの現在の拠点は。
少年: 雲の上。
聴取官: 年少構成員の数は。
少年: 百億。
聴取官: 銃器の保管場所は。
少年: 空と君の間。
聴取官: フォージャーの本名は。
少年: 榊原ポメミニピン大明神。
聴取官: 本名を知っているのか。
少年: 知ってるで。
聴取官: 言え。
少年: フォージャー。
聴取官: それは名前ではない。
少年: 俺らにとっては名前や。
聴取官: お前たちは、なぜそこまでフォージャーを守る。
少年は今度は笑わなかった。机の向こうを見ているというより、聴取官の後ろにいない誰かを見ているようだった。
少年: 守るんちゃう。返すんや。
聴取官: 何を。
少年: もらったもんを。飯も、服も、銃も、寝床も、仲間も、平等も、忘れんでいてくれたことも。全部そのまま返すんは無理やけど、せめて邪魔するやつの前には立つ。そんだけや。
聴取官: それで捕まった。
少年: みんな逃げたやろ。
聴取官: お前は置いていかれた。
少年: ちゃう。俺が立ち止まったんや。あの子らを先に行かせた。お兄ちゃんやからな。
聴取官: お前を助けに来ると思うか。
少年はそこで、また笑った。今度の笑いは、こちらへの嘲笑ではなかった。もっと単純で、確信に近いものだった。
少年: 来るかもしれんし、来んかもしれん。
聴取官: 信じていないのか。
少年: 信じてるから、どっちでもええねん。来たら嬉しい。来んかったら、みんな逃げ切ったんやなって嬉しい。俺はどっちでも勝ちや。
聴取官: フォージャーも同じ考えか。
少年: フォージャーくんは困った顔するやろなあ。俺が猫やったら首根っこ掴まれて怒られるわ。「無茶するな」って。そんで俺はえろうすんまへんってシッポだらんさせとく。
聴取官: フォージャーはお前を大切にしているのか。
少年: してるで。
聴取官: なぜ分かる。
少年: 俺のぶんの飯がある。
聴取官: それだけか。
少年: それだけを笑えるやつは、腹減ったことないやつや。
この発言後、少年は黙った。聴取官が追加質問を行おうとした直後、施設外周で銃声。続けて警報作動。廊下側から怒号、破砕音、複数の足音。少年は驚いた様子を見せず、むしろ退屈していた授業の終鈴を聞いた生徒のように、軽く首を回した。
少年: ほな、放課後や。
聴取官: 座っていろ。
少年: 先生、トイレ。
直後、照明が一度落ちた。予備電源に切り替わるまでの間、室内カメラ映像にノイズ。約七秒後、照明復旧。椅子は倒れており、拘束具は床に残されていた。少年の姿なし。
廊下壁面に、黒色スプレーによる大きな記号を確認。
0̸
ノーカウントがチームマークとして使用しているものと一致。現場状況から、外部のノーカウント構成員による襲撃および対象少年の奪還が行われた可能性が高い。
なお、聴取中に少年が語ったフォージャーの容姿、所在、接触方法、身代わり役の人数、本名に関する供述は、いずれも信用性が低い。一方で、フォージャーから食料、衣類、寝床、仲間、武器を与えられ、それが継続していたという発言、およびフォージャーに対する尊敬と感謝については、虚偽供述時と明らかに反応が異なる。
この部分については、少なくとも本人の中では真実と見る。

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