家を作ろうみんなの家を

 冷静に考えて、これから何年も未成年の兄弟+異形型個性の仲間たちで逃げ切れる訳なくないか? 俺がいるだけで『全国指名手配行方不明者』というデバフがあるので、どうフォローしたって目立つだろ。
 あと、たぶんこれからも支援者増えるだろうし……。という訳で、人の善意に寄生しては拠点を借りていた生活をそろそろやめようと思う。欲しいよな、持ち家。ロマンだよ。

 この前、ぼんやりと「集合住宅とかほしいな……後腐れのない大きな拠点ほしいな……」と呟いていたら、ふと、アレが最近まで異形型個性の子供を誘拐・販売してた敵組織にいたことを思い出した。
 子供を売れるってことは、それなりの広さと、バレないだけの偽装がされた場所があるってことだ。大人の目をごまかせる空間。使いようによっては、俺たちにとって最適な場所かもしれない。
 いいかもと思って、包帯を巻いてストックを作っていたアレにそっと近づき、「アレのいたところの規模を教えて欲しいんだけど……」と声をかけた。
 アレは道端の石を踏んだみたいに、音もなく首を傾けてからぼそぼそとしゃべる。少し前まで喋ると罰が与えられていた関係で、喋ることが苦手だと聞いた。全く、酷いことをするやつもいたものだ。

「減りました、売上。なので小さい。縮小。大きなところ、しっぽを切った故に」
「たすかる」

 つまり、もうそんなに大きな組織じゃないってことだ。しかも弱ってる。ということは、そこに巣食っていた連中の頭もたぶんそんなに良くない。アレみたいな個性を、無駄に浪費する程度の想像力と倫理観しかない奴らだ。雑に扱われてたのがその証拠。いやあ助かる助かる。

 最近の燈矢くんはというと、炎を強める方向じゃなく、体を冷やしながら炎を使うことで、熱で動けなくなる時間を消すように鍛錬をシフトしている。いい傾向だと思う。そっちのが長く戦えるし、後に残らない。

 俺が声をかけると肩をびくりと揺らして「どうしたの、俺きょう元気だよ」と小声で返事をしてきた。何回か「動けない? トイレ行けない? でないの?」と詰めて宣言通りトイレ前仁王立ち確認をしたせいか、最近元気がない。その代わり俺は安心したので元気。最悪動けなくなっても垂れ流しにはできるなと言ってからは「動けるし元気だから大丈夫」と健康アピールも適時してくれるようになった。
 勝手に心配してないでもっと早くに確認しとけば良かったなあ。燈矢くんがこんなに協力的になるなんて思ってなかった。

「とやくん、俺のおねがい聞いて?」
「……いいよ」
「なんでそんな絞り出すような声で……。そんなに大変なことじゃないから安心してって」
「……うん……」
「何に脅えてるんだ……?」

 ぺそぺそのしょぼしょぼになってて可哀想なので撫でくりまわすと、体重をかけて寄りかかりながら俺の手に頬擦りしてくる。焼けた皮膚はガサガサしていて触り心地があまり良くない。

「きょうはいじわるしない?」
「しないよ」
「……ん」

 か、かわいそう……。たぶん俺が悪いんだろうけど特に反省はしない。必要なことだった。だがそれはそれとして燈矢くんの元気がないのは悲しいので、ここらでいっちょ元気付けしましょうか!