ニック・シャープは、サバナクロー所属の二年生である。
獣人が多く、ただでさえ体格のいい生徒が集まりやすいサバナクローの中ではいくらか小柄に見える身長と、少し垂れ目がちな大きな目。そこだけ拾えば同寮のラギー・ブッチと特徴が重なるが、ニックは彼ほど溌剌とは動けない人間だった。
ラギーが隙を見つければするりと潜り込み、1マドルでも得になりそうなら尻尾を振って駆けていく類なら、ニックは急ぐ理由がなければ急がない。大人しいわけではないが、基本的にマイペースで呑気。昼寝をするなら日当たりのいい場所がいいし、飯は腹いっぱい食えれば嬉しいし、面倒事は向こうから来なければわざわざ拾わない。
獣人らしい耳も尻尾も感情に合わせてそれなりに動くものの、本人の反応が一拍遅いせいで、何を考えているのか分からないと言われることも多かった。
そんなニックにも妙に熱心な趣味がひとつだけあって、洗い物が好きだった。
汚れた皿を泡だらけにして、油膜もソースの跡も残らないよう磨き上げ、すすいだ食器を大きさ順にぴたりと重ねていく作業が好きなのである。
おかげでラギーが抱え込んだバイトを気まぐれに手伝ったり、オクタヴィネル寮のモストロ・ラウンジで裏方仕事を請け負ったりしている。授業態度は可もなく不可もなく、成績も飛び抜けて良いわけではない。
寮内で揉め事の中心にいることも滅多になく、寮長であるレオナ・キングスカラーから特別目を掛けられているわけでもない。ぱっと見たところでは、極平凡で、毒にも薬にもならない生徒の一人だった。
その日のモストロ・ラウンジは、新商品の発表直後ということもあって、普段より明らかに込み合っていた。
海中を思わせる青い照明の下には、授業を終えた生徒たちが次から次へと流れ込み、グラスの触れ合う音と話し声、それから注文を復唱する従業員の声が絶えず響いている。
アズール・アーシェングロットが嬉々として用意した新作メニューは評判も上々らしく、席はほとんど埋まり、入口では空席を待つ客まで出ていた。こういう日に限って、本来ならホール担当として客席を縦横無尽に歩き回っているはずのフロイド・リーチが、「今日はご飯作りたい気分」などと言い出し、そのまま誰にも止められない速度でキッチンへ消えたのも混乱の理由のひとつだった。
アズールが何か言おうとした頃にはもう遅く、フロイドはエプロンをつけて上機嫌に食材を刻み始めている。
ジェイドはいつもの笑顔で「仕方ないですね」と受け入れたので、結果としてホールには急遽配置を変えられた一年生が何人も放り込まれた。まだ給仕に慣れていない彼らは、オーダー票を取り違え、空いた皿を下げる順番に迷い、アズールから飛んでくる指示へ返事をしながら別のテーブルで呼び止められ、見るからにあたふたしている。
普段なら厨房のさらに奥、客席からほとんど見えない流し場で、肘近くまで袖を捲って泡まみれになりながら皿を洗っているニックも、その様子にはさすがに気づいた。
積み上がった皿を一山片付け、濡れた手を布巾で拭いながらホールを覗き込み、料理を二皿抱えたまま立ち尽くしている一年生をしばらく眺める。それから、困っているなら手を貸した方が早いか、くらいの軽い調子で口を開いた。
「じゃあ俺、向こう手伝いにいくよ」
本人としては純然たる親切だった。ニックは普段ホールに出ないだけで、給仕そのものができないわけではない。注文を聞けば忘れないし、皿を落とすほど不器用でもなく、客への受け答えも最低限は心得ている。
ただし、あくまで『それなり』だった。急かされても妙に丁寧で、グラスは音を立てないよう置き、皿の向きまで揃え、空いた食器を下げる時には客がまだ使っていないか一度確認する。モストロ・ラウンジの忙しさに合わせて動くには、少々のんびりしすぎていたのである。本人は本人なりに真面目に働いているのだが、目の前を忙しなく行き交うオクタヴィネル生たちと比べれば、どうしても隙があるように見えた。
そして基本的に性格の終わっている者が多いナイトレイブンカレッジでは、その手の隙を見せた方が悪いという、誰が決めたわけでもない暗黙の了解がある。
弱そうに見える。反撃してこなさそうに見える。少し鈍そうに見える。絡む理由など、その程度で十分な生徒がこの学園には一定数いる。治安はいつでも最悪だ。
なのでまあ、きっとニックが悪かった。
パシャン、と、不意に軽い水音がした。グラス一杯分ほどの冷たい水が頭からまともに降ってきて、髪を濡らし、額から頬、顎を伝って制服の襟元へ入り込んでいく。ニックは一度だけ目を瞬かせ、頬を伝った雫を手の甲で拭った。
「つめた」
それだけだった。驚いたようでも、腹を立てたようでもない。単純に冷たかったので、その感想を口に出しただけである。傾けられたグラスを持ったまま目の前で薄ら笑いを浮かべている生徒を見て、ようやく自分が水をかけられたのだと理解する。
その瞬間、二つほど離れたテーブルから椅子を蹴倒すような音がした。
「会計! 釣りはいらねえ!」
付近で食事をしていたサバナクロー生が、ほとんど叫ぶように言いながらテーブルへマドルを叩きつけた。食べかけの料理も残ったドリンクもそのまま、連れの腕をひっ掴んで出口へ全力疾走する。あまりにも見事な逃げっぷりだった。
モストロ・ラウンジの利用規約にも、店内で危険を感じた際には速やかに避難すること、などとは書かれていないはずだが、野生動物に危機察知能力は大切である。ましてサバナクローの生徒ならなおさらだった。
取り残された水をかけた本人だけが、その勢いに目を丸くしている。なんで逃げたんだ、とでも言いたげに扉とニックを交互に見た。どうやら本当に何も知らないらしい。
ひとつひとつの皿を丁寧に下げていたのが妙に癪に障ったのか、小柄で垂れ目の給仕係なら多少からかっても何もしてこないと思ったのか、あるいはなんら意味のない嫌がらせだったのか。理由はニックにも分からなかったし、特に知りたいとも思わなかった。ひとつ確かなのは、この生徒がニック・シャープという男を知らなかったということである。
ニックの方も、目の前の男が誰なのか知らない。制服を見ればどこかの寮生だということくらいは分かるものの、名前にも顔にも覚えがなかった。少なくともサバナクローではない。あそこなら大抵は顔くらい知っているし、そもそも同じ寮の連中ならこんなことはしない。オクタヴィネルでもないだろう。モストロ・ラウンジの従業員なら、ニックがどういう生き物なのか嫌というほど知っている。
じゃあ、知らない人だ。
それだけ確認して、ニックは手にしていたトレーを傾けた。
載っていた食器が、まとめて相手の頭へ降った。空いたグラス、ソースの残った皿、銀食器、小鉢、まだ料理の乗っていたプレートまで、遠慮なく全部である。
ガシャン、と派手な音を立てて陶器が砕け、悲鳴が上がる。いつでも料理を最高の状態で提供できるよう保温魔法を施されたプレートが相手の上へ落ち、じゅう、と新しく肉の焼ける匂いを立てた。鼻先をくすぐった香ばしい匂いに、ニックは今日の賄い肉がいいな、と思った。
考えたのはそれだけだった。
頭を押さえて蹲った男の肩を押し倒し、その腹へ跨がる。手を伸ばした先にちょうど割れていない皿があったので掴み、それで顔面を殴った。一発。皿にひびが入ったので反対の手にあった小皿へ持ち替えて、もう一発。
相手が腕で顔を庇えば空いている脇腹を殴り、身体を捩れば露出した肩を殴る。狙いが精密というより、殴れる場所があればそこを殴っているだけだった。悲鳴を上げようが、謝ろうが、床を蹴ろうが、ニックの手は特に速度を変えない。
「アズール~。ニックがまたやった~~」
厨房から顔だけ出したフロイドが、今日のおすすめメニューでも報告するような気軽さで言った。アズールは客席の惨状を一瞥し、割れた皿の枚数を数えるように眼鏡のブリッジを押し上げる。
「皿の値段の三分の一、刑期を伸ばしておいてください」
「バイト期間を刑期って言うのウケんね。残り三分の二は?」
「挑発した方ですよ。当然でしょう。即金でお支払いいただけない場合は、出せるもの全てを使って返済していただきます」
「はーい。ジェイドぉ、そろそろ止める?」
「怒られたくないので見ていましょう」
ジェイドはにこやかにそう答え、手にしていたティーポットから客のカップへ紅茶を注いだ。すぐ近くで人間が殴られているとは思えない優雅な所作だった。
客の方もちらりと騒ぎへ目を向けただけで、何事もなかったようにカップを受け取っている。ある程度距離が離れているし、ニックの攻撃目標が完全に一人に固定されているので「逃げなくてヨシ」と判断したのだろう。
少し離れた席では、逃げるどころか完全に観戦へ切り替えたサバナクロー生たちが盛り上がっていた。
「やれやれー!」
「まだニックにああいう絡み方する奴いたんだな」
「そっち危ねえぞ、皿飛んでくるから二歩下がれ」
誰も止めには入らない。止めに入れば自分まで殴られる可能性があることを知っているのである。攻撃対象を変えるというわけではないが、攻撃範囲が広いので巻き込みで殴られる危険がある。近づかなければ巻き込まれない。そういう見極めができる程度には、サバナクローでは『よくあること』だった。
ニック・シャープは獣人である。少し垂れた大きな目をした、手先が器用で、綺麗好きで、食べ物をよく洗いたがる、見た目だけなら愛嬌のある獣人。そして獰猛で、賢く、しつこく、喧嘩を売られたことを忘れない。
アライグマの獣人だった。
ガッガッガッ。
ガッガッガッ。
野次と歓声の入り混じるラウンジの中で、規則正しい殴打音だけが妙にはっきり響いていた。
恐ろしいのは、その間もニックの表情がほとんど変わっていないことだった。趣味の洗い物をしている時なら、頑固な油汚れが綺麗に落ちれば嬉しそうに笑う。友人とくだらない話をしている時には、垂れた目をさらに細めてにこにこしていることもある。飯が美味ければ機嫌もいいし、日当たりのいい場所で昼寝をしていれば尻尾までだらしなく伸びる。感情が乏しい人間では決してない。
ただ、この暴力には特に楽しいことがなかった。
水をかけられた。舐められた。だから殴る。相手が十分に反省するまで殴る。ただそれだけのことで、怒鳴る必要も、睨みつける必要も、威嚇する必要もない。蛇口を捻れば水が出るように、汚れた皿があれば洗うように、舐められれば殴る。ニックの中ではとうに一連の処理として完成しているらしかった。
だから今日も、つまらなそうな顔のまま拳を振るい続けていた。
殴られている方の抵抗が目に見えて弱くなり、床を蹴っていた脚もとうとう止まったあたりで、アズールは深々とため息をついた。
ここまで来れば、そろそろ止めても良いだろう。そう判断したらしい。帳簿代わりの端末をテーブルへ置き、心底面倒そうに椅子から立ち上がる。その動きを合図にしたように、周囲で半ば見物人と化していた従業員たちもそれぞれの仕事へ戻り始めた。ショーは終わりである。
ジェイドは床いっぱいに散った陶器やグラスの破片へ杖を向け、客の靴底へ入り込む前に魔法でひとまとめにする。フロイドはその隣へしゃがみ込み、「これ高いやつだったっけ」「こっちは安そー」と、実に大雑把な基準で割れた食器の総額を計算していた。正確な金額を出す気があるのかは怪しい。その騒がしさをまとめて貫くように、アズールの鋭い声が飛んだ。
「ニック! 皿洗いが残ってますよ!」
ガッガッガッ。
「あ、ごめん。ここも片付ける。海でいい?」
「捨てようとしない! 命あるかぎりモストロ・ラウンジの大切な財源……お客様です。まったく、あなたはすぐそうやって物事を処分すれば済むと思って……ところでお客様、この僕が調合した素敵な治療薬はいかがでしょう? 打撲、裂傷、骨折にも効果が期待できる逸品です。通常価格十万マドルのところ、今回は特別にお得意様価格、八万マドルでご提供いたします」
「おい、アズールが呼びかけてんだから返事しろ」
ガッ。
あ、今のは頬骨が砕けたな、と聞いていた全員がなんとなく分かる音がした。
ニックは最後にもう一発だけきっちり拳を入れてからようやく手を止める。下敷きになっている生徒は返事どころではなくなったが、少なくともこれ以上モストロ・ラウンジの従業員へ横柄な態度を取る元気もしばらくはないだろう。教育という観点では大変効果的だった。
ニックは怒りが頂点に達している間、基本的に他人の言葉を聞かない。耳が聞こえなくなるわけではないらしいが、脳が会話という処理を後回しにしてしまうのか、誰が何を言っても殴るべき相手を殴る方を優先する。
ただし一定量殴って気が済んでくれば話は別で、今のようにアズールが声を掛ければきちんと返事もするし、自分の仕事が残っていたことを思い出して反省だってできる。
そう、オクタヴィネル寮が掲げる海の魔女の大いなる慈悲の前では、この野蛮なケダモノすら最終的には大人しくなるというわけである。
慈悲の具体的な内容が「皿洗いへ戻れ」であることと、その直前まで客の顔面を皿で殴っていたことには目を瞑ってほしい。モストロ・ラウンジにおける慈悲とは、概ね利益が出る範囲で適用されるものだった。
その後、ニックは床へ散った残骸の片付けをジェイドに任せ、アズールから「あなたが触るとまた何か壊れそうなのでさっさと持ち場へ戻りなさい」と追い払われるように厨房奥へ戻った。
頭からかけられた水で濡れた髪はもう半分ほど乾いていて、本人もすっかりいつもの顔をしている。さっきまで人間一人を床へ沈めていた男と同一人物とは思えないほど呑気な足取りで流し台の前へ立ち、溜まった皿を見て「あ、増えてる」と少し嬉しそうに袖を捲った。
「またやっちゃった」
蛇口を捻りながら言うと、先に厨房へ戻り料理をしていたフロイドがすぐ隣へ寄ってきた。本人が作りたいだけ作って満足したのか、いつの間にか調理器具を片付け始めている。ニックの濡れた頭を見下ろし、それから何がそんなに面白いのかにやにやと口元を歪めた。
「ニック、ちっせえからすぐ絡まれんね。ハリセンボンみてーに身体中に針仕込んどけばいいんじゃねえ? 触った奴ぜんぶブッ刺さるやつ」
「動きにくそう」
「じゃあやめときな」
話はそれで終わった。フロイドにとってもニックにとっても、今日の一件はその程度のことである。
ニックは洗剤を垂らしたスポンジを揉み込み、もこもこと膨らんだ泡へ機嫌よく皿を沈めた。元々このアルバイトを始めた理由からして、「洗い物が好きだし、趣味のついでに金ももらえるなら得だな」程度のものだった。
ところが働き始めてみれば、モストロ・ラウンジには大皿がある。巨大な寸胴鍋がある。ソースのこびりついたフライパンがある。宴会客が入れば、一人暮らしでは到底お目にかかれない量の食器が次々と運び込まれてくる。ニックにとってはほとんど娯楽施設だった。問題があるとすれば、その食器をたまに喧嘩の武器として使用することである。
最初の頃は給料から弁償代を引かれるだけで済んでいた。しかしニックは殴り合いになると手近にあるものを使う。
皿を使う。グラスを使う。ボウルも使う。丈夫なトレーならそのまま殴るし、割れた皿なら「もう割れてるからこれ以上弁償額は増えないな」と非常に合理的な判断までして使い回す。
その積み重ねによって、とうとうバイト代だけでは賄えなくなった。現在は働けば給料が出るのではなく、働くたびにアズールが管理している借金残高から少しずつ数字が減っていく仕組みである。もっとも、そこへ新しい皿代が追加されることもあるので、実際にはなかなか減らない。
要するにタダ働きである。
普通なら辞める。
ニックは辞めなかった。
「だって、でかい皿とかでかい鍋、めちゃくちゃ洗いたいし」
以前そう答えられたフロイドは、しばらく何も言えなかった。金が欲しくて働いているわけではない。待遇に不満があるわけでもない。それどころか借金があること自体もさほど気にしておらず、今日も嬉々として泡まみれになっている。
その心理がフロイドにはいまひとつ理解できなかった。理解できないものについて深く考える性格でもないので、しばらく考えた末に出した結論が、「ニックは俺が面倒みてやんないとダメ」というものだった。慈悲深き海の魔女の教えが、ここでも効果を発揮した。
以来、フロイドはモストロ・ラウンジのシフトを見る時、ニックの勤務日をなんとなく自分と同じ日に寄せている。
別に毎回一緒でなくてもいいのだが、ニックがいる日は把握しておきたいらしい。そして仕事が終わると、その日の機嫌が悪くない限り、自分の財布から250マドルを取り出してニックへそっと握らせる。
「ほら。これでパンでも買いな」
「やったあ」
ニックは本当にそれ以上何も考えず受け取る。施しだとも、小遣いだとも、哀れまれているとも思っていない。250マドルもらった。パンが買える。嬉しい。それで終わりである。
フロイドの方はフロイドの方で、自分が面倒を見ている生き物へ食費を与えたくらいの満足感を得ているので、双方とも非常に幸せだった。
問題は、その光景を何も知らない第三者が見ると、どう見てもフロイド・リーチが小柄なサバナクロー生へ小銭を渡しながら「パン買ってこいよ」と命令しているようにしか見えないことである。
「アイツ、リーチにパシらされてね?」
そう勘違いした迂闊な生徒が、『こいつはバカにしてもいいものだ』と勘違いしてニックへ絡む。
ニックは絡まれたので殴る。
殴る際に皿を割る。
割った皿の分だけ借金が増える。
借金が増えたのでバイト代がなくなる。
バイト代がないニックを見たフロイドが、「やっぱニックは俺が面倒みてやんないとダメじゃん」と250マドルを渡す。
そしてまた、それを見た誰かが勘違いする。
完璧な循環だった。誰か一人でも事情を正確に理解すれば止まりそうなものだが、フロイドは自分が原因の一端であることに気づいていないし、ニックはそもそも困っていない。
アズールに至ってはニックが働き続ける限り人件費を抑えられるので、積極的に改善する理由が薄かった。絡まれるに至る迷惑料と合わせると、金銭面でプラスになる部分が大きい。ジェイドは全て分かっていそうだったが、面白いので黙っている。
こうしてモストロ・ラウンジの平和は、海の魔女が掲げる大いなる慈悲の心と、非常に単純で純粋な『暴』の力によって今日も守られていた。
凶暴なアライグマは、今日も機嫌よく皿を洗う。泡の中から汚れの落ちた大皿を持ち上げては満足そうに眺め、次の鍋へ手を伸ばす。その隣では凶暴なウツボが、その日の気分で料理をしたり、客席へ出たり、アライグマへパン代を渡したりしている。
代わり映えなど何ひとつない。
いつも通りの、平和なモストロ・ラウンジの一日だった。

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