ぼくの、わたしの素敵な猋田桟

ぼくの、わたしの素敵な猋田

 

中山 メイリーさん(7)

高橋 遥斗さん(4)

高橋 心遥さん(4)

野崎 理玖さん(5)


朝起きて 鳥と子どもが よくしゃべる
俺より先に 町が起きてる

匿名希望さん(28)

喧嘩して 遠のいた子が 連れ帰る
孫追う犬の 尾のよく揺れる

藤織 鋼作さん(65)

暮れかかる 町の向こうに 灯がともり
遊び足りない 子を母が呼ぶ

比嘉 サヲリさん(58)

 


 

 この町へ来たとき、小生には本来、別の目的があった。何をしに来たのかはここでは書かない。書く必要もない。

 駅へ降り、改札を抜け、見知らぬ商店の看板と遠くの山を眺めた瞬間、なぜか理解したのだ。小生の住む場所はここだ、と。理屈はない。こういうことを言うと感傷だの運命だのと勝手な名前をつける者がいるが、好きにすればいい。小生自身、説明できん。

 ともかくその日のうちに家を借りた。庭のある古い家だ。一生一人で暮らすつもりだったので広さなど不要だったが、その庭が今になって役立っている。近所の人間から野犬の子を押しつけられたのだ。

 まだらな茶色で、どこをどう見ても締まりのない模様をしている。断ろうとしたが、小生が見捨てたあと、この情けない顔をした生き物がどうなるか想像してしまい、仕方なく飼うことにした。今となれば、あのお人よしの家にもう一匹間抜けな顔をした犬が増えただけだとわかるが、その時の小生は近隣住民の性格を理解していなかったのだから仕方あるまい。

 犬など庭へ放して番犬にすればよいと思っていたのに、昨今の夏は人間でさえ熱で死ぬ。全身毛まみれの動物を炎天下へ置いておくのも寝覚めが悪く、家へ入れた。そこから先は早かった。今では当然のように廊下の真ん中で寝て、小生が避けて歩いている。

 紙煙草もやめた。落とした葉や吸い殻を誤食されては困るからだ。朝は散歩へ連れ出される。そのせいで近所に顔見知りが増え、八百屋には犬の名で呼び止められ、散歩帰りに野菜まで持たされるようになった。

 まったく生きにくい町だ。静かで、飯がうまく、人間は余計な世話を焼き、犬は我が家の主のような顔をしている。このままでは小生は穏やかな人間になってしまう。

特別寄稿 御厨玄岳/文筆家

 

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