さいつよ

さいつよ

ぴぇー

叔父虎が来てから、毎日がさらに楽しくなった。 もともと楽しくなかった日なんてない。朝起きれば誰かの腹か背中に顔が埋まっているし、寝床の外へ出れば雪があり、風があり、追いかけても追いかけても捕まらない父の尻尾がある。 母の前足へ四匹まとめて襲...
さいつよ

ごろごろんぬ

住処の奥で、きょうだいと取っ組み合いをしていた時だった。 最初に異変へ気づいたのは、左前脚の縞が途中で切れている子だった。私の尻尾へ噛みついていた口を急に離し、顔を入口の方へ向けて動かなくなる。丸い耳が前へ立ち、鼻先がひくひくと動いた。 私...
さいつよ

がおーん

少し離れたところに、人間が二人いた。 人間だ、と声に出した途端、二人は揃って妙な動きを始めた。こちらへ背中を向けるでもなく、身体だけは私たちの方へ向けたまま、後ろ向きにするすると離れていく。 足元は雪と岩で凸凹しているのに、とても速い。人間...
さいつよ

西部山岳帯セデ村滞在中の覚え書き【2】

雪融月九日。 雪解けを祝う小さな祭りが行われた。 氷嶺白虎を直接祀る祭礼ではないが、最初に焼いたパンの端と乾燥肉を一片、村の北側にある平たい岩へ置く。 白虎への供物かと尋ねると、マレは「虎に食べてもらいたいんじゃない。山に、今年もここで暮ら...
さいつよ

西部山岳帯セデ村滞在中の覚え書き【1】

見に来たもの: 氷嶺白虎。特に、姿を見せなくなった雌と、繁殖の可能性について。 場所: セデ村と、その周辺の山域。 記録: ブラムウェル・パンクハースト 王立博物院第三魔獣研究室 雪融月三日。 王都を発って十二日目、ようやくセデ村へ到着した...
さいつよ

がうーわ

暖かい日は、きょうだい同士で毛繕いをする時間が増えた。 冬毛が浮いている場所を噛み、舌で梳き、取れた毛を吐き出す。 最初は母がしていたが、四匹分を一日中舐めるのは大変らしく、私たちも互いにやるよう教えられた。私は魔法では役に立てないので、せ...
さいつよ

ぴぃお

前世の私の名前は、菜花火花と書いて、なのはなひばなと読んだ。名字なのか名前なのか判然としない、というより、どう見ても平和な花畑に火を放った輩みたいな字面だと散々いじられたが、姓も名前も単体で見ると可愛い方だろ! と今でも釈然としない。可愛す...