夏はそこで止まっている

 夏休みは普通に終わった。宿題は最後の一週間まで残したし、友達とは二回映画を見に行った。九月になって学校が始まり、しばらくはまだ暑い日が続いた。十月に入る頃には制服の上着を着るようになり、教室の窓から見える木も少しずつ色づき始めていた。

 その頃、母の携帯電話に田舎から連絡があった。

 その時、僕は家にいた。母は仕事から帰ってきたばかりで、まだ制服のままだった。玄関で電話を受け、そのまま台所へ入る。通話が終わっても着替えようとはせず、椅子に座った。鞄も床へ置きっぱなしになっていた。

「田舎からでしょう。家のこと、まだ何か決まってなかったの」

 母は携帯電話をテーブルに伏せた。

「あの子が死んだって。今日連絡があった。細かいことは私もまだ聞いてないけど、今回は行かなくていい」

 一瞬、誰のことか分からなかった。

 母が「あの子」と呼ぶ人間は、一人しかいない。

 病気だったのか、事故だったのか。一人で死んだのか、誰かがそばにいたのか。祖母の家だったのか、それとも別の場所だったのか。聞こうと思えばいくらでも聞けたが、母の顔を見ていると、どれも口にできなかった。

「葬式はどうするの」

母は僕と目を合わせなかった。

「もう燃やしたの。全部」

頭の中で、薄黄色い石が、叔父の肉や骨と一緒に炎へ呑まれていった。

本当にそうなったのかは分からない。

確かめる方法は、もうどこにもなかった。

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