2026-09

さいつよ

一般待機白蛇

少し前​───────​ 遠くで二度目の鳴き声がした。今度はフィロンにも、先ほどより明らかに近づいていることが分かる。ガウーワの母親はかなり大きく、まだ姿が見えない距離からでも声だけはよく通った。意味も聞き取れる。帰ってきなさい、今すぐ、も...
さいつよ

一般通過神獣

最初に動いたのは、大柄な一頭だった。雪を蹴った、とブラムウェルが認識するより早く、白い身体がこちらへ向かって跳ねる。耳は立っている。爪も出ていない。口まで半分開いていて、どう見ても怒ってはいなかった。​ だから余計にまずい。怒っている獣なら...
さいつよ

バッドイベント 好奇心はカエルを殺す

岩角鹿の処理が終わる頃には、先ほどまでの騒ぎが嘘のように森へ静けさが戻っていた。​ 雪の上には蹄と人間の足跡が無茶苦茶に残り、何人かの神官は法衣の裾まで濡らしている。それでも怪我人は一人もいない。あの巨体を相手にして、である。​ ブラムウェ...
第四王子

やらかしちゃったおんなのこ

リュシエナ・ハルヴェインは、十歳になるのをとても楽しみにしていた。正確には、十歳の春から通える王立学院を楽しみにしている。 まだ三年も先なのに、学院の制服が載っている古い冊子は何度も開いたせいで自分の好きな頁だけ少し癖がつき、初等部一年生を...
第四王子

未来あるおんなのこ

エルシノア・ヴェルグレイヴは、王都へ行くのがあまり好きではない。王都そのものが嫌いなわけではなく、大通りには辺境で見かけない店がいくつもあり、母と一緒に菓子店を覗くのは楽しかった。建物は大きく、道を行き交う馬車も華やかで、初めて王宮を遠くか...
第四王子

前世あるおとこのこ

前世の俺は、婚活でかなり苦労した。顔は悪くなかったと思う。少なくとも自分ではそう思っていたし、清潔感にも気を使っていた。着るものだって趣味を押し通すよりTPOを優先し、初対面の人間と話すことにも特別な苦手意識はない。学生時代からまるきり非モ...
オリジナル

終着点への私信

グレグが『主人公そいつ』を気味悪いと思うようになったのは、入学して三日目だった。もっと正確に言うなら、そいつ本人というより、そいつを取り巻いている世界のほうが気味悪かったのだと思う。​ 入学式の日から目立つ男ではあった。孤児院で魔法の才能を...
BL

1000年分の口実

 
BL

After the Future

村へ来て三日目、ユアンは森の外れに変人が住んでいるという話を聞いた。変人、と言っても、夜な夜な墓場を掘り返すとか、旅人を煮込んで食うとか、そういう景気のいい話ではない。村人からすればもっと身近で、だからこそ扱いに困る種類の変人らしかった。 ...
オリジナル

転落に向かない性格

アルセリア王国には、ヴァルナハト公爵家の秘宝と呼ばれる者がいる。誰が最初にそう呼んだのかについては、王都でも話が少しずつ違った。現国王がまだ王太子だった頃、冬の宮廷でそう口にしたのだという者もいれば、先代公爵が酒席で自慢したのが始まりだとい...