此処で朽ちる縄の恋
山の中にいる老いたハブネークは、もう何度ボールを投げられても捕まらない。捕まってはいけないのだ。人のものを取ったら泥棒だから。あのひとのものだった自分が、今さら別の誰かのものになるわけにはいかない。
ずいぶん昔に聞いた声も、撫でてくれた手の感触も、もらったご飯の味も、もう曖昧になっているのに、それだけは忘れなかった。
『捨てておくれと言ったのに、捨ててはくれなかったからね。アナタは俺のために泣いてくれたかな。だったらうれしいな』
シャーシャー、ガラガラ。山の中では、昔よりずっと細くなった蛇の声がする。
あいしてる。あいしてる。何度言っても、それは昔からただの蛇の声だった。好きだということくらいなら、触れ方や仕草で伝わったかもしれない。大好きだということさえ、もしかしたら分かってくれていたかもしれない。それでも、その先にあったものだけは、とうとう一度も届かなかった。
大好きすらも届かない距離から、それでも『愛してる』を捧げ続ける、蛇の話でした。

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