殺し屋

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逃走許可

結城誠人は、自分が人から恨まれるようなことをしたとは思っていなかった。 少なくとも、殺されるほどのことはしていない。女から金を取ったことはある。結婚するつもりがあるようなことも言った。実家の事業が危ないだの、海外へ転勤する前に身辺を整理した...
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隠密不適正

午後三時を少し回った頃、向かいの席で社内資料を読んでいた蜂屋が、ふっと顔を上げた。「誰か来ますよ。まだちょっと遠いっすけど、こっち来てますね。急いではないと思います」「分かるの?」「足音するんで。たぶん一人っすね」「へえ」 楯岡にはまだ何も...
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正常転調

蜂屋弥一郎がスモールアップルに移って三日、少なくとも現場へ出て人を殺すところまでは、前の会社と大して変わらないことが分かってきた。依頼書を確認して、対象を見つけて、殺す。死体を残すか回収するか、事故に見せかけるか、指定されたものを持ち帰るか...
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一体追加発注

午後二時半を少し過ぎた第三業務室で、楯岡博文は午前中に終わらせた仕事の報告書を作っていた。 依頼人との接触時刻、対象を確認した場所、実行時刻、撤収経路、現場へ残したものがないことの確認。特に難しい内容ではない。ただ、現場では数分で済んだこと...
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善行受難

【動画】火事のマンション素手で登ったリーマン何者だよ1:地震雷火事名無し 朝のニュース見てたら変なの映ってたんだけど何あれマンション燃えてて三階のベランダに子供取り残されてる→通りすがりっぽいスーツの男が外壁から普通に登る→子供背負って普通...
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地下二階の適材適所

午後三時を少し過ぎた第三業務室で、伊坂恭平は一枚の作業変更票を両手に持ち、楯岡博文の机の脇に立っていた。何か頼みたいことがあるのだろうとは察していたが、こちらから先に声を掛ければ、伊坂の「察してもらえるまで待つ」という悪癖を育てかねない。楯...
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復讐者は名乗れない

午後一時を七分ほど過ぎた頃、楯岡博文は人材派遣会社スモールアップルの本社前へ到着した。 午前中は休みを取り、目覚ましをかけずに九時半まで眠り、近所の喫茶店で十一時までしか注文できないモーニングセットを滑り込みで食べ、ついでに髪も切ってきた。...
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酒禍遺恨

「ねえゲロ坂、これ第一特務課へ持っていってくださる?」 午前十一時を少し過ぎた第三業務室で、首藤環は伊坂恭平の机へ書類を置いた。「自分で持ってきたんだから、帰りに持っていけばいいだろ」「昨夜、あんたが確認印を押さずに寄越した書類ですけれど」...
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逆運戴冠

場内の照明が一斉に落ちると、伊坂が隣で小さく声を上げた。初めて映画館へ連れてこられた子供のような反応だったが、三十歳に近い男がやっているので、暗闇に紛れていなければ少し恥ずかしい。 もっとも、楯岡も他人のことは言えなかった。首から提げた関係...
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お守り争奪

月末の午後、人材派遣会社スモールアップル第三業務室の複合機前で、伊坂恭平は三人の女子社員に囲まれていた。 囲まれている、と表現するしかない配置だった。背後には用紙を補充するために開け放たれたコピー機、左には壁、右には葉先の枯れた観葉植物があ...