2025-12

いきてきたるif

いきてきたるif⑥完結

帰りたい! 帰りたい! 帰りたい! 帰りたい! 頭の奥でそれだけが鳴り続けている。あいつらはみんな嘘つきだ。悪い奴らに捕まったんだ、だから焼いた、俺は悪くない。悪くない、悪くない、悪くない。きらい、きらい、きらい。家に帰る。帰れば大丈夫だ。...
いきてきたるif

いきてきたるif⑤

漫我くんと遊んで帰ってきた焦凍は、病室のドアを開けるなり「かいてもらった」と誇らしげに言って、ちぎり取ったお絵かき帳の紙を両手で差し出してきた。 端っこがギザギザになったその紙には、猫、犬、オールマイト、わけのわからないくらい躍動感のある恐...
いきてきたるif

いきてきたるif④

病院の面談室は、どこも同じ匂いがする。消毒液と、古い紙と、金属の冷たさ。窓はあるのに外は遠くて、ここだけ世界から切り取られているみたいだった。 その部屋の中央に、轟炎司が立っていた。窮屈そうにスーツを着込み、肩幅と熱量だけで狭い部屋を圧迫し...
いきてきたるif

いきてきたるif③

父さんの謝罪を聞いて、この人謝ったら死ぬ病の生き物じゃなかったんだ!? と驚くと同時に、なに人間っぽいことしてんだよ……! という八つ当たりじみた感情も湧いてきた。お前、ここまでやったんだからせめて憎みやすい造形であれよ……! 謝られたら、...
いきてきたるif

いきてきたるif②

冬美と夏雄をメンタルクリニックに連れてきたら、俺が一番重症だった今日この頃です。ええ、そうなの……? 診察後に冬美と夏雄だけ看護師に連れていかれて、俺が話を聞くのかと思ったらハチャメチャに詰められた。アニメでしか見たことの無い鋭利なデザイン...
いきてきたるif

いきてきたるif

転生して二年未満バブ期くらいで気づいたんだけど、これおしまいかもしれん。 たまにやってくる不審な巨人が父親であるということは理解してたのだが、あれって轟炎司……テレビに出てるエンデヴァーってやつと同一人物だよな……? 国民的コミックの世界へ...
いきてきたる番外

かつて彼は“頼れる兄”だった

夕方、家の中にゆっくりと夕焼けが差し込む時間帯だった。西日が障子の縁を赤く染め、畳の上に長い影を落としている。 今日はお父さんが早く帰ってくれる日だったはずだ、と燈矢は何度目かの確認をするように胸の内で呟いた。 前よりも強くなった。前よりも...
いきてきたるものがたり

巨悪は一旦敗れたらしい

“先生”のいる方向で、空気そのものが破裂したみたいな大音量と振動に襲われた。鼓膜が悲鳴を上げ、足元が一瞬ふわりと浮く。それでも、そんなものはどうでもよかった。それより先に、胸の奥で煮えたぎった怒りが全部を押し流す。 ゆゆゆゆるさねえからなヒ...
いきてきたるものがたり

【珍獣パレード】

「こちらは、防災無線です。緊急の安全案内をお伝えします。現在この周辺で建物崩落の危険があります。二次崩落、有害粉塵の可能性があります。近づかず、落ち着いて距離を取ってください。けが人や取り残されている人を見かけた場合は119番へ、場所を伝え...
珍獣パレード

歪皮 まっしろという男の話をしよう。

これは聞き流していただいていいんですけど、私は《あかり教》というものに入信していまして、ええ、ああ、いえ、本当に勧誘ではないんですよ、そこはどうか安心していただきたい、見ての通りでしょう、《あかり教》特有の……“あかり”? ええ、そのガラス...
いただきもの

珍獣パレード 留目 存保

わっふるさんから!
珍獣パレード

留目 存保という男の話をしよう。

ちゃんと病院に行けば、たぶん名前が付くのだと思う。けれど名前が付いた瞬間、それがただの傾向や癖ではなく「事実」になってしまう気がして、どうしても足が向かなかった。変わるもの────変化が、苦手だ。環境も、人も、正義も悪も、昨日までの常識も、...
珍獣パレード

温森 恒一という男の話をしよう。

生きるべきか、死ぬべきか。 たぶんそんな感じの二択だったと思う。正確な文言はもう忘れた。シェイクスピアだっけ、ゲーテだっけ。海外の偉い作家の何かだった気がする。なんだっけ、忘れた。この言葉を思い出した時も、人生の岐路、みたいな大げさな言い方...
珍獣パレード

餐島 祈利という女の話をしよう。

母は、美しい人だったのだそうです。 そして私は、その母によく似ているのだと、何度も言われてきました。 それが褒め言葉だったのか、それとも「男受けのいい顔をしている」という皮肉や嘲笑だったのか​─────正直なところ、今でもよく分かりません。...
愛と正義

※終わった後のオマケ情報

 
愛と正義

愛と正義の『愛』担当の俺です 対戦よろしくお願いします

 
珍獣パレード

尤坂 了という男の話をしよう。

にゃん、という気持ちだ。 言葉としては無意味だが、今の心境を言葉にするならこれ以外に思いつかない。さっきまでの熱がまだ身体の中に残っている。 マッチングアプリで引っ掛けた男は、プロフィールに二十五歳と書いていたがたぶん違う。もっと若い。とい...
珍獣パレード

猪狛可 子子という少女の話をしよう。

ちゅう、ちゅう、ネズミがチュッ。ネズミがネズミが、チュッチュッチュッ。 笑いを含んだ軽やかな少女の歌声が、湿った裏路地に弾むように広がっていく。跳ねる足取りが汚水の溜まった水たまりを遠慮なく踏み、ぴしゃりと濁った水音を立てるたび、腐った臭気...
オリジナル

本日は8時32分発各駅停車をご利用いただき、誠にありがとうございます。 割り込み乗車は大変危険ですので、順番を守ってご乗車ください。事故防止にご協力をお願いいたします。

 
いきてきたるものがたり

【最悪】

「なんで“あかり”がいるのよ……!」 頭上、遥か上空から落ちてきたマウントレディの声は、怒声というより苛立ちを噛み殺しきれなかった舌打ちに近かった。音量は抑えられているはずなのに、夜気を伝ってやけに鮮明に耳に届く。その一言だけで、現場の空気...