世界で一番超絶可愛い俺のザングース

 

ザングース は いうことをきかない!

 ザングースは柵に寄りかかって、今日も外を眺めている。主人の友人だという女が少し前から後ろで真面目な顔をして何事か喋っているような気がするが、それはたぶん理解しなくてもいい類のことなので聞かないことにした。人間はたまに、やたら難しい顔をして長い話をする。主人もそうだった。そういうときは適当にそっぽを向いていれば、そのうち諦める。だから今日も同じように、柵の向こうを眺めている。

 主人はここへ自分を預けた日、「明後日帰るから良い子にしてるんだよ」と言っていた。鬱陶しいくらい何度も頭を撫でて、抱きついて、知らないポケモンについて行くなだの、喧嘩するなだの、飯はちゃんと食えだの言っていた。最後には自分の匂いがついた服まで置いていった。そんなものなくても二日くらい待てると思っていたし、実際そのつもりだった。

 けれど明後日が来て、その次の日が来て、さらに次の日が来ても、主人はまだ迎えに来ない。

 これはもしや捨てられたか、と一度だけ考えた。けれどすぐに馬鹿らしくなった。いいや、あの主人が自分を捨てるなんてありえない話だ。うぬぼれているわけじゃないが、自分はとても愛されている。毎日鬱陶しいくらい構われて、寝ていれば起こされ、腹を触られ、尻を追いかけられ、何かにつけて可愛い可愛いと言われてきた。少し他のポケモンを可愛がっただけで自分が拗ねれば、大慌てで機嫌を取りに来るようなやつだった。そんな主人が、何も言わずに自分を置いていくはずがない。

「ザングース、聞いて。彼はもう」

 後ろから声がしたので、耳だけ少し動かした。それ以上は聞かなかった。

 良い子にして待っていれば帰ってくると言ったくせに、いくら良い子にしていても来てくれない。だったらそのうち悪い子になってやる。迎えに来たときには思いきり尻尾で叩いてやるし、しばらく抱きつかせてもやらない。ポフレを持ってきても一個くらいじゃ許さない。五個。いや十個は必要だ。主人はきっと泣きながら謝るだろうから、そのときになったら仕方なく許してやる。

 また後ろで女が何かを言っている。今度は声が震えていた。泣いているようだったので少し気になったが、今は慰めてやる余裕がない。そういうのはメタモンががんばれ。あいつは柔らかいし、抱きしめるにはちょうどいいだろう。

 俺はここでもう少し、主人が帰ってくるのを待ってみるんだ。

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