某月某日 もしかしたらザングースって可愛いという概念そのものなのでは…?
ザングースと一緒に森を突っ切っていたら、どこかでノミを貰ってきたらしい。帰ってからやたら身体を気にしているので毛をかき分けてみたら発見した。俺としては「あー、ノミか。お風呂入らなきゃな~」くらいの軽い気持ちで笑っていたんだが、どうやらザング的には笑い事ではなかったらしい。野生の誇りなのか綺麗好きなのか知らないけど、ものすごく矜持を傷つけられた顔をして、そのまま無言で風呂場へ向かった。そして今、さっきからずっとコマタナみたいな顔で湯船に浸かっている。眉間に皺を寄せて腕を組み、肩までしっかり沈んだまま一向に出てこない。最初は「気持ちいいのかな」と思って放っておいたんだけど、あまりにも静かなので心配になって様子を見に行ったら、数分おきに息を止めて全身をぶくぶく沈めていた。頭のてっぺんまで完全に水没して、しばらくしたらざばっと浮上して深呼吸、それからまた真顔で沈む。どうやら本気でノミを一匹残らず水攻めにして駆逐するつもりらしい。そんな原始的な殲滅作戦ある?
さすがに見かねて「ノミ取り粉あるんだぞー。そんな頑張って沈まなくても大丈夫だぞー」と声をかけてみたんだが、ザングはこちらをちらっと見ただけだった。その顔が完全に『貴様に借りは作らぬ! 』だった。いや俺お前の主人なんだけど。今さらノミ取り粉ひとつで貸し借り発生する関係じゃなくない? そんなことを思っているうちに、ザングは鼻から大きく息を吸い込み、また静かに湯船の底へ沈んでいった。意地でも自力解決する気らしい。可愛い。なんでそんな無駄に男前なんだよ。面白かったので、沈んでいく瞬間を写真に撮って、友人へ「ザングースが親指を立てながら溶鉱炉に沈んでいくシーンには涙が止まりませんでした! 」という一文をつけて送った。もちろん実際には親指なんか立ててないし、そもそも溶鉱炉でもない。ただの我が家の風呂である。でも表情だけなら完全に使命を果たして沈んでいく英雄だったので、我ながらかなり良い写真が撮れたと思う。
数秒後、友人から返信が来た。「w」ふざけんなザングの可愛さを一文字で表現できると思ってんのか、ザングが出てくるまで寂しいから最低三千文字で返信しやがれ。

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